カフェの確定申告では青色申告と白色申告のどちらが得か?(計算例あり)

小さなカフェの開業・経営をアトオシするカフェナレッジです。個人事業主として、カフェを開業した場合、所得税を確定申告する必要があります。その申告方法として青色申告と白色申告の2種類がありますが、課税所得を最大65万円分特別控除できることなどから青色申告を強くおすすめします。

カフェ青色申告書と確定申告書

カフェで青色申告は可能

青色申告は、不動産所得、事業所得、山林所得を有する事業者のみが選択できる確定申告の方法です。カフェなどの飲食業は、事業所得に分類されるので、カフェで青色申告による確定申告は可能です。

青色申告と白色申告の違い

青色申告で確定申告したい場合は、管轄の税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を事前に届け出する必要があります。期限内に届け出しない場合は、自動的に白色申告扱いになります。

青色申告承認申請書節税できるカフェの所得税の青色申告承認申請書の書き方【PR】

青色申告も白色申告も帳簿付けが必要です。2014年分から、白色申告者も「帳簿の記帳」と「帳簿等の保存」が義務づけられたため、白色申告と青色申告にかかる労力の差が小さくなりました

白色申告は「簡易(単式)簿記」、青色申告は「複式簿記」となります。複式簿記は簡易簿記と比べるとやや複雑ですが、手書きや電卓で計算していた時代ならともかく、今は会計ソフトを使えば恐れるに足りません。

会計ソフトで、淡々とルールに基づいた仕訳(日々の取引を「借方」と「貸方」に分けて勘定科目と金額を入力する)をすれば、複式簿記の専門的な知識がなくても、クリック一つで、提出書類の青色申告決算書、確定申告書などの必要書類をPDFで出力できます。

基本的にカフェの仕訳は非常にシンプルです。とはいえ1年目は多少分からないことを調べることがあると思います。しかし、翌年以降は全く同じことの繰り返しです。

次の項で列挙するとおり青色申告には、さまざまな税制上の優遇措置があります。1年目の手間を考えても青色申告は余りあるメリットがあると言えます。

青色申告と白色申告の違い

区分 青色申告 白色申告
事前届け出 必要 不要
帳簿付け 複式簿記 簡易(単式)簿記
提出書類 青色申告決算書(損益計算書及び貸借対照表)
確定申告書B
収支内訳書
確定申告書B
税制上の優遇措置 多々あり なし

簡易(単式)簿記で記帳できる青色申告もありますが、特別控除が10万(複式簿記の場合は最大65万)と節税効果が小さいので表中には記載していません。

青色申告の豊富な税制上のメリット

最大65万円を特別控除できる

課税所得から最大65万の控除ができます。仮に課税所得が40万の場合は控除できるのは40万までです。課税所得とは収入(売上)から必要経費を除いたもので、課税所得に税率を掛けたものが税額となります。したがって課税所得が控除されれば当然税金は安くなります。※青色申告と白色申告の所得税の計算例を後述しています。

家族への給料が全額経費になる

家族をカフェの従業員にしている場合、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出することによって、その給与(専従者給与)の全額を経費として計上できます(白色申告の場合は経費として計上できず、金額に上限のある専従者控除が可能です)。

ただし、支払える給料は届出書に記載した範囲かつ、世間一般の相場に見合った時給や給与である必要があります。例えば、近隣のカフェのバイト代が時給900円なのに、同じ業務を時給3000円として給与を払うことはできません。

赤字を3年間繰り越せる(純損失の繰越し控除)

発生した赤字分を、翌年以降の3年間に発生した黒字と相殺できます。もし、赤字200万円で、翌年が黒字50万円、翌々年が黒字50万円、明明後年が黒字100万円の場合は3年間、税金を払わないですみます。

一方、白色申告の場合は黒字の額に対して毎年税金を払う必要があります。カフェの開業当初は、初期(設備)投資のために経費がかさみ赤字になることが多いので、カフェのビジネスに適したメリットと言えます。

30万円未満の資産を一括経費にできる(少額減価償却の特例)

通常、10万円を超える資産を購入した場合、法定耐用年数に応じた期間で経費化(減価償却)していきます。しかし、青色申告をしている場合は、30万円未満まで一括で経費化が可能です。

たとえば、カフェで購入した製氷機が24万円したとします。通常なら製氷機の法定耐用年数は6年なので、6年かけて24万を経費化するところ、一括で24万円を経費にできます。当然、一括で経費として計上できる方が節税できます。1年間でトータル300万円分まで利用可能です。

家事関連費を経費として計上できる

自宅や自家用車などを事業用として利用した場合、家賃や電気代、電話代、ガソリン代などを家事用と事業用の利用割合で按分することで、事業用としてかかった費用を経費として計上できます。

経費にするには合理的な計算根拠を示す必要があり、実際には結構面倒な作業が発生します。たとえばカフェの食材の買い付けのために自家用車を使っていて、そのガソリン代を計上したい場合は、走行距離のメーターを毎回記録しておく必要があるでしょう。

貸倒し引当金を利用できる

売掛金(つけ)が回収できなくなった場合を想定して、年末に残っている売掛金の一部を費用として計上することが可能です。しかし、基本的にカフェは、キャバクラやスナックなどと違って売掛金が発生しないので関係のないメリットでしょう。

青色申告と白色申告の所得税額の違い(計算例)

特別控除(最大65万)が使える青色申告と、使えない白色申告で、どのくらい所得税の違いがでるのでしょうか。カフェの収入(売上)を900万円、必要経費(家賃、食材費、水道光熱費など)を450万円、基礎控除を48万円として比較してみます。所得税の計算式は次のとおりです。

収入(売上)-必要経費-各種控除=課税所得
課税所得×税率-課税控除=所得税額
※計算式の簡略化のため復興特別所得税(所得税の2.1%)は加味していません

青色申告と白色申告での所得税額の比較

区分 青色申告 白色申告
収入(売上) 9,000,000 9,000,000
必要経費 4,000,000 4,000,000
基礎控除 480,000 480,000
特別控除 650,000
課税所得額 3,870,000 4,520,000
税率 20% 20%
課税控除 427,500 427,500
所得税額 346,500 476,500

※所得税の税率と課税控除はこちらを参照のこと

この例では、所得税額について青色申告が346,500円、白色申告が476,500円となり、青色申告で130,000円が節税できることになります。実際には、他の青色申告のメリットによりもっと納税額に差が生まれる可能性が高いです

そしてさらに、住民税や国民健康保険の保険料は、課税所得に基づいて算出されます。つまり、青色申告を選択することで住民税や国民健康保険の保険料も同時に抑えることができます

青色申告を強くおすすめする理由が分かってもらえたでしょうか。

編集後記

カフェの仕訳は非常にシンプルですが、分からないことがあれば税務署や税理士会が主催する無料説明会などで相談しましょう。一年目以降は同じ仕訳の繰り返しなので青色申告で多くの節税メリットをぜひ享受してください。

税務署への提出書類は、会計ソフトを使えば複式簿記の専門知識がなくても簡単に作成できます。カフェにおすすめの会計ソフトについてはこちらをご覧ください。

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